「教育の機会平等」がはらむ歪みとは?

以前は奨学金については貸し付け型であっても、返済については奨学金だから・・と配慮がなされていたのですが、今では異なります!
まるで国営悪徳サラ金のような感覚です・・・。

「50歳を越えても返済が続く。とてもではないが、結婚や出産は考えられない」

「返済のためにアルバイト漬けになってしまうので、大学を中退せざるをえなかった」

奨学金の貸与を受けた人から、こうした悲痛な声が上がっている。本来人生を豊かにするはずの教育への投資が、逆に人生の選択肢を狭めることになっているという、深刻なものだ。

奨学金と言えば、世界標準ではスカラシップ、すなわち返済不要の給付型のものを指すのが一般的だ。しかし、日本の場合は海外留学向けのもの以外は原則として貸与。平たく言えば、学生個人が負う借金である。

日 本において、高等教育における費用は、それぞれの家庭が負担することが普通だ。もし家庭に経済的余裕がなければ、学業と平行して自力で資金を捻出しなけれ ば、学生生活を送ることは難しい。日本の奨学金事業の9割近くを担う独立行政法人日本学生支援機構は、「『奨学金』は、自分の力で有意義な学生生活を送 り、将来の夢をかなえるための貴重な手段です」と学生向けガイドブックの中で強調する。

■奨学金制度は、ビジネスと化しているのか

し かし、奨学金問題対策全国会議事務局長の岩重佳治弁護士は「日本の奨学金制度は、利用者である学生のためのものではなく、『貧困ビジネス』となっている」 と批判する。一般的に、「貧困ビジネス」とは、貧困層をターゲットにした、貧困を固定化するビジネスモデルである事業のことをいう。教育に対する援助とし ての位置づけであるはずの奨学金制度が、どうしてここまで罵倒されてしまうのか。

そこには、利息がつく貸与金の増大や、延滞金というペナルティの存在、日本学生支援機構の回収に対する考え方など、いくつかの構造的な原因が見えてくる。

日本学生支援機構が提供する奨学金には、2つのタイプがある。

特 に優れた学生で、経済的理由により著しく修学困難な人に貸与する、無利息の第一種奨学金と、よりゆるやかな基準で貸与される、利息(上限は3%)が付く第 二種奨学金だ。奨学金は、当初、無利子のものしかなかったが、大学への進学者の増加に対応するため、1984年から無利子の第一種奨学金を補完するものと して、有利子の第二種奨学金を創設した。

第一種奨学金は、国の一般会計からの政府貸付金と返還金を財源としているから、無利子での貸与が可 能だが、事業規模の拡大は簡単ではない。一方、第二種奨学金の財源は、財政融資資金等、民間からの資金が主であるため、ニーズに対する柔軟な対応が可能 だ。政府の方針に基づき、1999年度からは貸与基準は大幅に緩和され、基準に合致する者全員への貸与が可能となるように、事業規模についても拡大した。 その結果、利息付きで貸し出す第二種奨学金の割合は右肩上がりで激増し、現在では貸与額全体の3分の2に迫る。